簡単に神経伝達を理解するための3ステップ解説
この記事では神経伝達が起きる仕組みを教科書よりも詳しく解説します。
全て読まずとも、自分の苦手な部分だけでも目を通してみてください。
参考書籍
ビジュアル実践リハ 脳・神経系リハビリテーション〜カラー写真でわかるリハの根拠と手技のコツ
神経伝達までの経路
神経伝達と聞くと難しいイメージですが、刺激が伝わる過程は3ステップを理解すれるだけで全体が把握できるようになります。その小分けしたステップは以下の通りです。
- 興奮
- 伝導
- 伝達
このステップに区切ってそれぞれ学習することで、効率よく神経系について理解を深めることができます。
ごちゃごちゃした説明を大学で受けたかもしれませんが、たったこれだけです。思ったより単純ですよね?
それでは見ていきましょう!
興奮
活動電位
「 興奮=活動電位の発生」とは一時的に脱分極を起こし、膜電位が上昇した状態のことです。ニューロンに刺激が伝わると、この活動電位は発生します。その後、再分極を起こすと、元の静止膜電位に戻ってきます。
この文章を読むと 紛らわしい単語が多い印象ですね。やる気が無くなるのも分かります。ただ、意外と言っていることは簡単なんです!
キーワード:ニューロン、静止膜電位、脱分極、再分極
ニューロン
ニューロンとは、神経細胞(neuron)です。刺激を受け取り、伝達する役割を果たします。驚くことに、ニューロンの中には長さが1メートルを超えるものもあります。
静止膜電位
細胞膜は内側をマイナス、外側をプラスに保つ働きをしています。この状態が「分極」です。興奮が起きる前は変動が無い(静止している)ので、静止+膜電位で静止膜電位と呼ばれるのです。そのままですね。
では、この偏った電位はどうやって生まれるのか?
その答えになるのが、ポンプとチャネルです。
①Na+/K+ATPaseによって、エネルギーを消費した濃度勾配を作り出します。
②漏出K+チャネルだけ開いてます。
③濃度勾配に従ってK+が逃げ出します。
④K+が減った細胞内側は相対的にマイナスになります。
→これが静止膜電位の正体です。
この①~④さえ覚えれば、興奮を理解するうえで必要な情報の半分はおしまいです!
脱分極→分極状態が変化
静止膜電位を保っているとき、内側はマイナス、外側はプラスと分極した状態になっています。この分極が解消される方向に動く状態を脱分極と呼ぶのです。これもそのままです!
では、脱分極を引き起こして犯人は誰なのか?
それが、電位依存性Na+チャネルです。
通常は閉じているこのチャネルは、寝ているふりをしています。興奮をそっと待ち望んでいるのです。刺激が来た瞬間に飛び起きて、Na+を通し始めます。電位差が一瞬解消(0mV)される方向に働き、そのままプラスに進みます。
しかし、このままやられっぱなしで終わると刺激は一生続いてしまうことになります。これではメリハリある伝達を行うことはできなくなります。
ニューロンは困ってしまいました。
再分極で元の日常へ
ここで、平和を守る正義の味方の登場です。それが電位依存性K+チャネルです。垂れ流しをしている怠け者のK+漏出チャネルとは違い、こちらは電位依存性Na+チャネルの動きをじっと観察しているのです。
動いたと分かった瞬間に万引きGメンのごとく電位依存性K+チャネルを開き、膜電位をマイナスに戻す努力をします。どちらのチャネルも濃度勾配に従って変動するので、プラマイゼロで元に戻すという作戦です。
過分極といって電位依存性K+チャネルが最初よりも電位を少しだけ下げてしまいますが、最後はもとの静止膜電位に戻ってくるので一件落着というわけです。
伝導
伝導は鬼ごっこと同じ?
ニューロンの伝導は 一度活動電位が発生するとスタートします。隣にあるチャネルが次々と開き、次のニューロンまで伝わります。この連鎖を生み出すカギとなるのが電位依存性です。
電位に依存するとは、電位が変化したときにそれに反応する性質のことです。つまり、隣のチャネルが開くとそれに便乗することができる仕組みになっているのです。ここで一つの疑問を解決しましょう。
「隣の電位に依存するなら、無限に逆流した刺激が起きてしまうのではないですか?」
もし仮にそういったことが起きれば、このパートを理解することは難しくなるでしょう。
しかし、安心してください。ニューロンは逆流が起きないように作られています。
この方向性を作り出すシステムは、子どもの頃にやった鬼ごっこに例えると簡単に理解できます。
- 鬼は一番近く(隣)にいる人を狙います。
- そしてタッチをします。
- 一番近い人はさっきまで鬼だった人ですが、その人にタッチ返しするのは無しです。
- そのため、逆隣の人にタッチします。
- タッチ返しが無効なのは一定期間だけです。
- 再び刺激が来れば、最初に刺激をもらうニューロン末端は、再び鬼をやらなくてはいけません。
以上で伝導の話は終わりです。
要約をすると、
電位依存性チャネルを駆使することで、ニューロンは刺激を隣のニューロンに届ける。逆流は無いが、刺激が再び来れば再度伝導を行う。
伝達
最後に一番複雑な伝達を説明します。
伝達は最初、シナプス末端からグルタミン酸・アセチルコリン・GABAが放出され、チャネルにある受容体に結合し、そのチャネルを開きます。
陽イオンがニューロン内に入れば興奮し、陰イオンが入れば興奮が抑えられるということです。
ちょっと複雑で難しいですね。
そんな悩みは、伝達を口コミサイトに例えてさよならです。
口コミサイトで比較する興奮の変化
皆さんは口コミサイトをご存知ですか?このサイトはとても便利で、実際に行って良かったことや悪かったことを教えてくれます。
この口コミサイトはお店にとっては経営を支える大切な役割をしており、たった一つの投稿で客の数が大きく変動することもあります。
そんな大切なサイトは神経伝達にも応用できるのです。
まず興奮性シナプス伝達は、利用者がポジティブな情報を発信する口コミサイトAと考えましょう。
シナプス末端から放出されるグルタミン酸・アセチルコリンは、それぞれ投稿された良い口コミとします。その口コミを確認するお客さんが次のニューロンというわけです。
皆さんは良い口コミを見たら、そのお店に行きたくなりますよね?
陽イオンはその口コミよって影響を受けて生まれた、「お店に行きたいなぁ」という考えそのものです。
陽=良いというイメージで暗記すればよいのではないでしょうか?「行きたいなぁ」と考えている人は、そのお店に行く可能性が上がります。
その可能性こそが、次のニューロンが興奮しやすいかどうかの指標になるわけです。いい口コミを見れば、背中を軽く押すだけでそこに行こうと決める、それだけの話です。
抑制性シナプスも同じ
抑制性シナプス伝達は興奮性の真逆なので簡単にまとめます。
利用者がネガティブな情報を発信する口コミサイトBによってそれぞれ悪い口コミ(GABA・グリシン)を発信します。
その情報をみた客(次のニューロン)はお店に行くことをためらい(興奮しづらくなる)ます。
この興奮と抑制が組み合わさることで神経系は出来上がっています。トータルの興奮が閾値を超えれば次のシナプスは刺激を伝導します。
まるでインターネットのネットワークの様にとても複雑です。ただ、そんなに詳しいことはテストで問われないので、覚えなくてオッケーです。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の記事は、難しい神経伝達を分解することで、簡単に理解ができるようにしました。
繋がると複雑な単元は、繋がりをほどきながら学習することを心掛けてください。
皆さんの悩みがこの記事によって解決したら嬉しいです。